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介添えの夢 前書き


 ひとつの情景がある。  深く碧く澄み渡る夜明けの空を舞う、銀色の龍。  それを地上から見上げる、ひとりの少年。  これがわたしの知っている、たったひとつの物語だ。他の全てはこれから派生した枝葉に過ぎない。これから書こうとしている作品は、この事実を最も直截に描くものだ。  この原風景にはある種の普遍性が含まれているとわたしは信じる。少年は言うまでもなく、わたしたち自身だ。そして龍は、わたしたちを“先へ”と導くものだ。それを希望と呼んでもいいし、理想と名づけてもいいだろう。本来それは形など持ってはいない。だがあえてわたしの想念の中で、象徴としての現身を纏わせるのであれば…その姿は間違いなく、銀色に輝く幻獣の王にほかならない。  まことに子供じみた話で申し訳ない限りである。それでも急速に色褪せ、分裂し、希望を失ってゆくこの世界の中で…その物語はなおも鮮やかさを増してわたしを呼んでいる。 2018年8月24日 -Cleio-主宰 佐々木 総


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